中国神話や道教の教えを極彩色のコンクリート像で再現したテーマパーク。怪しさと楽しさが詰まっています。
こんにちは、シンガポールナビです。今日は中国の神話や説話、道教の教えを色鮮やかなコンクリート像で再現した、楽しいテーマパーク「ハウ・パー・ヴィラ」をご紹介します。
もともとは「タイガーバーム・ガーデン」として知られていたこのテーマパークは、1935年にタイガーバームの売り上げで財を成した香港の富豪、胡文虎によって作られました。香港にも同名の彫刻庭園があることで有名でしたが、そちらは2000年に閉鎖されてしまっているため、胡文虎が世の人々に伝えようとした世界観を残す施設は、いまや世界にここだけなのです! 極彩色で彩られた神話や道徳のジオラマの造形には、笑いを誘われるものも多数存在します。今日はキッチュな楽しさに満ちたこの巨大庭園について、見どころをすみずみまでご案内します。
MRTハウ・パー・ヴィラ駅のすぐ目の前。入場無料!
ハウ・パー・ヴィラは、MRTサークル線のハウ・パー・ヴィラ駅を降りたらすぐ目の前。到着するなり、極彩色の岩山や彫像、黄色い立体文字の「How Par Villa 虎豹別野」という看板に目を奪われます。虎豹(ハウ・パー)とはタイガーバームを売って巨万の富を築いた、胡文虎と胡文豹の兄弟のこと。入口にはこの二人を表す、トラとヒョウのレリーフもあります。掴みからインパクト絶大のハウ・パー・ヴィラは、なんと入場無料。シンガポーリアンも、いろいろな国からの観光客も、気軽に散策に訪れています。
思わず引いてしまう強烈さ! 十大地獄めぐりへ
園内の案内板
入口をくぐって順路を歩いていくと、右手にハウ・パー・ヴィラの園内案内板があります。ここで大体の位置関係を把握しておくとスムーズに回れます。まずは案内板からほど近い、園内南部の「十大地獄めぐり」のエリアに向かいましょう。途中でタイガーバームを両手に持った、トラの「ゆるキャラ」がいるのはご愛敬。さらにその近くには、胡文虎が乗っていたという、トラの頭が付いた「タイガー・カー」が停まっています。フロント部分が牙をむいたトラのオブジェで飾られ、全体がトラ模様で塗装された車は、1932年のもの。一代で財を為した胡文虎の、剛毅さが伝わってくるスゴイ愛車です。
タイガーバームを持つゆるキャラのトラ
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胡文虎のタイガー・カー。迫力。
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タイガー・カーの横を抜けたら十大地獄めぐりに行きましょう。コンクリート造りの洞窟の中では、地獄に落ちた人々を裁く十の法廷と、その後の責め苦が繰り広げられています。薄暗い洞窟の中で見るおどろおどろしい彫刻は、なかなかショッキング。洞窟は赤や青の照明でライトアップされており、お化け屋敷のような雰囲気を醸し出しています。ひとりで入ると、背後を振り返るのがちょっと怖くなるかも・・・。しかしデフォルメされた人物たちの表情は、よく見るとかなりユーモラスです。
地獄の責め苦にあう人の様子。こっ、怖い!
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閻魔様のお裁きは容赦なし。血みどろの責め苦が続く。
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なぜか自由の女神がいる、パゴダの池
十大地獄の洞窟をめぐったら、西へ進んで順路に戻りましょう。先程の案内板の前を通過すると、漢の将軍の漢鐘離の像や、なぜか相撲の力士像がいます。ちょっと不気味なパンダの親子のコンクリート像もあったりして、どういう基準でこれらが並んでいるのかと首をひねりたくなりますが、それもハウ・パー・ヴィラの「何でもアリ」な魅力です。
力士像の北側には、中国風の東屋が建つ池があります。その隣には、黄色い袈裟を着た仏像が乗ったパゴダがあり、東洋の雰囲気を醸し出しています。しかし池の畔に立っているのは、なぜか自由の女神像。ツッコミどころ満載ですが、観光客には意外にこのミスマッチな取り合わせが受けています。東屋とパゴダを背景に、自由の女神と並んで写真を撮る人がいっぱい。自由の女神が見つめる先には、白蛇の化身とその夫が試練に遭う、中国の壮大な恋物語のジオラマがあります。
中国風の東屋と池を背にした自由の女神。不思議な光景。
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てっぺんに仏像が乗っている、極彩色のパゴダ
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白蛇の恋物語を、二階建て構造のジオラマで表現
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金山寺の牢に幽閉された夫を取り戻すために戦う白蛇
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伝説の仙人、姜子牙の池
白蛇の恋物語のジオラマを見たら、順路を北上しましょう。「呂洞賓」や「何仙姑」などの八仙人がいるジオラマを右手に見ながら進んでいくと、園内北部に釣り竿を持った老人の像が立つ池があります。この老人は、封神演義に出てくる姜子牙。釣り竿を手にしながら、彼が仕えることのできる、主君の訪れを待っている場面を表しています。通りかかった周の文王にみごと召し抱えられた姜子牙は、後に周の軍師となって大活躍することになります。この池には人魚たちのコンクリート彫像も並んでいて、古代の中国なのかアンデルセン童話の世界なのかちょっとわからなくなりますが、このミスマッチ感覚がハウ・パー・ヴィラの懐の深さです。
コミカルな人物造形が面白い「美徳と不道徳」
姜子牙の池の東側の一帯には、「美徳と不道徳」について人々に啓蒙するためのジオラマが並ぶコーナーがあります。これが、デフォルメされた彫刻によってコミカルに表現されていて、よく見るとなかなか面白いのです。不道徳を表しているのが、賭博やアヘンによって道を踏み外していく青年の物語。遊び呆けている青年や女性たちの服装がレトロで、このテーマパークが作られた時代を感じさせます。最後に青年は借金で首が回らなくなり、家畜のブタから自分の妻まですべてを奪われてしまうのです!
美徳を表すジオラマの中で面白いのが、中国の昔話を再現した「カメの恩返し」。ある日市場に運ばれていたカメを助けた青年は、数年後に彼が乗っていた船が難破したときに、いつかのカメに救出されて荒波の中から生還する・・・という中国版の「浦島太郎」のような話です。難破の場面はまるでタイタニックを思わせますが、救出されたカメの背中で踊っているような青年のポーズを見ると、「善人のはずの青年が、そんなに調子に乗っていていいのか!」とツッコミたくなります。この並外れたコミカルさもまた、ハウ・パー・ヴィラの魅力なのです。
市場に運ばれるカメ。この後で青年が逃がしてやります。
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難破した船から、いつぞやのカメに救出される青年
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等身大の彫像で再現される、迫力と笑いの「西遊記」の世界
「美徳と不道徳」のジオラマがある高台から、南側の下段へ降りると、「西遊記」の世界を再現するコーナーがあります。等身大のコンクリート彫刻で再現された三蔵法師と、孫悟空・猪八戒・沙悟浄の三人の弟子はなかなかの迫力! 孫悟空が牛魔王と羅刹女の子である紅孩児と戦う場面は、特にかっこよく表現されています。しかし三蔵法師たちが天竺へ赴く旅の途中で、女性ばかりが住む西梁国へ立ち寄った際に、美女に姿を変えた蜘蛛の妖怪たちに襲われるシーンのジオラマなどは、「なんでこの場面を再現しようとしたんだろう?」と首をかしげたくほどコミカルです。尊い三蔵法師の肉を食べて不死身になろうと企む美女(=蜘蛛)たちは、何だか場違いなほどのなまめかしさ。まんまと色仕掛けに引っかかって捕らえられた猪八戒は、ちょっと間抜けな姿を晒していて笑えます。このコーナーをすみずみまで見て回れば、「西遊記」が身近になること間違いなしです。
玉龍が化身した白馬にまたがる三蔵法師。尊い姿です。
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牛魔王と羅刹女の子、紅孩児と戦う孫悟空。かっこいい!
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ナゾの動物たちの彫像も・・・
中国の神話や道教の教えを伝えるために胡文虎が作ったハウ・パー・ヴィラですが、なぜか園内のあちこちには、オーストラリアやアフリカの野生動物たちのコンクリート彫刻もあります。ダチョウの背中にカメが乗っかっていたり、キリンがバッファローと雄々しく戦っていたり、「現実にはあり得ない!」と頭を抱えてしまう彫刻も数多くありますが、ほぼ等身大かつちょっと愛嬌のある動物たちにはつい微笑をそそられます。園内にはお気に入りの動物たちと写真を撮る人たちがいっぱい。あなたも気に入った動物の彫刻と一緒に、写真を撮ってみてはいかが?
ダチョウの背中にカメが乗っている彫刻。マンガ的な光景。
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バッファローと勇敢に戦うキリン。あり得ないけど面白い。
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華僑の歴史がよくわかるホア・ソン・ミュージアム
ハウ・パー・ヴィラの西部には、華僑の歴史を伝えるホア・ソン・ミュージアムがあります。中国各地から海外へ移住していった中国人について、その暮らしぶりを、等身大の人物模型や生活雑貨を用いて再現しています。異国の地で発展していった中国系の人々の力強さが、リアルに感じられる博物館です。ハウ・パー・ヴィラの中では、この施設のみ入場料が必要となります。
入場料: 大人 8.6 Sドル/子供 3.35 Sドル(3-12歳)/60歳以上 3.35 Sドル
極彩色の彫刻で彩られたハウ・パー・ヴィラは、見れば見るほど楽しい発見のある庭園です。独特の世界観を表すジオラマの中に、あなただけのお気に入りを探してみてくださいね。以上、シンガポールナビでした。