鮮やかな熱帯植物でいっぱいの、広大な国立植物園。世界最大級のラン園「ナショナル・オーキッド・ガーデン」は必見!
こんにちは、シンガポールナビです。今日はシンガポール随一の観光名所「ボタニック・ガーデン」の歴史や秘密、意外な見どころなどについてご紹介しましょう。52ha もの広大な植物園は、観光客だけでなく、市民たちにも広く愛されている憩いの場。入場無料ということもあって、土日はランチボックスを提げてピクニックをする人たち姿があちこちに見られます。ここで結婚式の記念撮影をする、新郎新婦たちもたくさんいるんですヨ! 夕方には、すがすがしい緑の中をジョギングする人々が集まってきます。隅から隅まで楽しめる、都会の中の贅沢なオアシスなのです。
国に利益をもたらしたボタニック・ガーデンの歴史
ボタニック・ガーデンの開園は1859年。農業園芸協会によって設立され、1874年以降は国の管轄となっています。初代園長となったヘンリー・ニコラス・リドリーは、1888年から23年間、草創期のボタニック・ガーデンのために精力的に働いた人。彼はマレー半島のプランテーション経営者たちにゴムの木を育てるよう熱心に推奨し、当時はコーヒー栽培が主流だった農場主たちからは「狂ったリドリー」「ゴム・リドリー」と渾名されたほど。1890年代から1900年代前半にかけてリドリーはゴムの木の研究を続け、木に害を及ぼすことなくゴムを採取する方法を発見します。後に自動車産業が盛んになってからはゴムの需要が急増し、大きな収益をもたらすようになりました。ボタニック・ガーデンの研究成果が東南アジアのゴム産業、ひいては近代産業を促進させた発展の基礎となったのです。
1928年からは、当時の園長だったエリック・ホルタム教授の発案により、ランの交配と繁殖に力を入れるようになります。ボタニック・ガーデンの生み出した丈夫で優れたランは、やがて世界中に評価されるようになりました。今日ではシンガポールの重要な輸出品となり、ランの切花の世界市場の15%を占めているほど! 特にデンドロビウム・ファレノプシス(いわゆるデンファレ)は盛んに輸出されており、日本でも人気です。ランの繁殖の様子はタングリン・ゲート近くのボタニー・センターにある、ラン繁殖実験室で見ることができます。
ランの交配と繁殖を行う実験室
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ランの発育を促すため、試験管を振る様子が見られます。
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園内にあふれる熱帯の花
なだらかな芝生と遊歩道が続く園内は熱帯の鮮やかな花でいっぱい。白い清楚なサンユウカ、かんざしのようなオウゴチョウ(黄胡蝶)、花びらの裏まで愛らしいプルメリア、赤やオレンジのハイビスカス、鳥のくちばしみたいなヘリコニア・・・見逃してはもったいないほどたくさんの種類の花が咲いていますので、ぜひゆっくり歩いてみてくださいね。
白い星のようなサンユウカ
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赤やオレンジ色が鮮やかなオウゴチョウ
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プルメリアの花びらは、裏のピンクのラインも必見
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華やかなオレンジ色のハイビスカス
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特に注目してほしいのは、フラミンゴ色の花と不思議な実をつける「キャノンボールツリー」。名前のとおり砲丸のように大きな実が、肉厚の花とともに垂れ下がっています。なんだかオブジェのような花の形といい、思わず投げたくなっちゃうような丸い実といい、ユーモラスな魅力を持った花木です。この不思議な実、若いうちは食べたり清涼飲料を採ったりすることができるそうですが、熟すと悪臭を放ちます。あやしい臭いが漂ってきたら、この木に近づいている印かも…?!
キャノンボールツリーの花
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名前のとおり、キャノンボールのような実
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時間を語る大木「ヘリテージ・ツリー」
ボタニック・ガーデンでは、熱帯の国ならではの大木も必見です。巨大な幹やゴツゴツと張り出した根は、神々しささえ感じさせるほど。特に重要な木の根元には、「ヘリテージ・ツリー」という案内板が立っています。
右の写真の大木は、インドや中国南東部に起源を持つ「サガ」という木です。どんぐりのような大きさの、鮮やかな赤い実をつけます。この実はかつて、東南アジアから中東にかけて、重さを量る単位に使われていたんだとか。「サガ」という名前も、この実で金の重量を量っていた、アラブの金細工師を意味する言葉だったそうです。どっしりした大木を見ていると、そんな歴史も納得しちゃいますよね。園内には「ヘリテージ・ツリー」に定められた木が、全部で11本あります。ぜひ探してみてください。
ヘリテージ・ツリーの一つ、サガ
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ヘリテージ・ツリーのテンブス。全長42m。
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世界最大規模のラン園、ナショナル・オーキッド・ガーデンは必見!
ボタニック・ガーデンの最大の目玉は「ナショナル・オーキッド・ガーデン」。3ha もの敷地を持つ、世界でも最大規模のラン園です。このゾーンのみ有料ですが、お金を払う価値は十分にあり! 1000を越える原種と、2000種以上の交配種からなる、約6万本のランがところ狭しと咲いています。デンファレで埋め尽くされたお花畑や、オンシジウムのアーチ、バンダで作られた花の垣根など、鮮やかなランが並ぶ様子は夢のよう。ボタニック・ガーデンが1928年から力を尽くしてきた、ランの交配と繁殖の成果が惜しげもなく披露されています。
ラン園の奥にある「VIPオーキッド・ガーデン」には、世界中からここを訪れたVIPの名前を冠したランが展示されています。各国の皇族や元首の名前を冠したランは、格別の美しさ。ここで生まれたランの数々を、ぜひご覧ください。
ドレスを着た踊り子のような可憐なオンシジウム
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オンシジウムのアーチ
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インドの元大統領夫人の名を冠した「バンダ・ウシャ」
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シンガポール名物のデンファレは様々な色形があります。
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想像を超える色と形の花が集う、ジンジャー・ガーデン
ナショナル・オーキッド・ガーデンの隣りにはジンジャー・ガーデンがあります。中南米から東南アジアにかけて分布するショウガ目の植物が植えられた、ジャングルのような区画になっています。バナナやカルダモンやヘリコニアも含むショウガ目の花々は、鮮烈な色に独特の造形美。そしてジンジャーであるゆえに、ほのかな香りを漂わせている花が多いのです。
視覚・嗅覚ともに楽しませてくれるジンジャーの花は、実はたいへんデリケート。ほとんどの花はたった一日しか咲きません。最も美しい姿を見せてくれる時間は、午前中~昼過ぎくらい。ジンジャー・ガーデンは、なるべく早い時間にまわることをオススメします。
ボードウォークに沿って様々なジンジャーが咲いています。
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香りゆたかなホワイト・ジンジャー
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華やかな形のトーチ・ジンジャー
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独特の造形美
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椰子の木の谷を彩るヘリコニア・ウォーク
広大なボタニック・ガーデンの中でも、特に壮大な景色を楽しませてくれる場所は、中央部にある椰子の木の谷(パーム・バレー)です。なだらかな曲線を描く谷底に向かって、115属・220種を超える椰子の木がズラリと並んでいます。その美しい光景は、まさに夢に見た熱帯そのもの!
さらにその景色に華を添えているのは、パーム・バレーに沿って伸びている「ヘリコニア・ウォーク」です。鮮やかな黄色や赤色が印象的なヘリコニアが椰子の木の谷を見下ろすように植えられています。小さなバナナが顔を出したようなヘリコニアの別名は「オウムバナ」。とがった花の形がオウムのクチバシに似ていることから名付けられたそうです。まるで鮮やかなオウムが椰子の森から大挙して現れたかのような、楽しい道なのです。
広々とした椰子の木の谷
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椰子の木の谷に沿って伸びるヘリコニア・ウォーク
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オウムのクチバシのようなヘリコニア・ロストラタ
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両脇にヘリコニアが咲く楽しい小道
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植物だけじゃない! 訪問者の目を楽しませるたくさんの彫刻
ボタニック・ガーデンを散策する人の目を楽しませてくれるのは、花や木ばかりではありません。園内にはあちこちに彫刻が置かれていて、人の手で作られた作品と植物の調和が、絶妙なムードをかもし出しているのです。シダでいっぱいの区画を背景にした、リアルなオオトカゲの彫刻。茂みの中から飛び出してきたように、軽々とブランコを漕ぐ少女像。野外ステージを見下ろす場所で、ピアノを弾くショパン像・・・どの彫刻もその配置のうまさに感心させられます。これらの彫刻は、広いボタニック・ガーデンを歩く際のランドマークにもなっています。
まるでシダの森から出てきたようなオオトカゲの彫刻
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ブランコを漕ぐ少女の彫刻
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茂みの上を滑るように自転車を漕ぐ少女像
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ピアノを弾くショパン像はポーランドから贈られたもの
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一年中真夏のシンガポールですが、いつも同じ花が咲いているとは限りません。ボタニック・ガーデンでは、訪れる時期によって少しずつ異なる花々が美しい姿を見せています。一期一会の熱帯の花や草木たちに、ぜひ会いに来てくださいね。以上、シンガポールナビでした。